2021.02.22

Side Story「Fly me to the star」


Novel Movieはこちら:
https://youtu.be/-eEOAOvMdMY
水星 (covered by ENO):
https://youtu.be/LlR0eU-_1vQ

「あ、もう星が出てる!一番星!す……いせぃ……」
まだ夕焼けが残る空に、ピカピカと光る星を見つけて、あたしは思わず声をあげた。
けれど、最後の「すいせい」は「す」から「い」までの間に、自分でも笑っちゃうくらいボリュームがフェードアウトした。
あー失敗。
隣を歩くアオルタが口を開く。
「水星……?エノ、あれは金星、よね」
「……うん、金星、だね」
あれは金星。
その事実に、心にひっかかった小さなトゲみたいな思い出が蘇る。
楽しかった日々と、嘘と。
そして、さよならすらなかった突然の別れ。
「あの星が、水星だったらよかったのにな」
小声でつぶやいた。
「エノ? 何か言った?」
「ううん、アオルタ、ちょっと前にさ、守護星占いって流行ったの覚えてる?あたしの守護星、水星なんだよね」
「あぁ、そういえばそんな占いが流行った時期があったわね……私は調べたこともないけれど……自分の守護星なのに、さっきはどうして間違えたのかしら?」
「……ほら、人にはあんまり話したくない過去ってやつが1つや2つはあるじゃない?」
アオルタはとたんに顔を曇らせて、目を伏せる。
「ああ、それはごめんなさい。わかったわ……エノとはだいぶ心の距離も近づいた気でいたけれど、私の思い上がりだったのかもしれないわ……」
「え、え、え、困ったな。近づいてると思うよ、あたしたちの心の距離!!」
「誰だって話したくないことはあるわよね……エノ、ごめんね」
わ、アオルタを落ち込ませちゃったかもしれない。そんなつもりじゃないのに。
「全然そんなことないって!!」
「あら、そう?」
アオルタはこちらを見上げた。大人の上目遣い、おそるべし……アオルタの方が背が高いのに、一体どうやってるの??なんか、あたしアオルタのてのひらの上で転がされてる気がするんですけど……
「……ほら、あたし人に騙されやすいじゃん? 気づいたらマカロンに釣られてアクログラムにエントリーさせられてたり、ライブ生配信されてたり、ニナっちとレナっちには悪党に追いかけられてると信じ込まされたしさ……」
「そうね、エノはたしかに騙されやすいし、見るからに騙されやすそうね」
アオルタは、うんうんとうなずいている。
「そこまではっきり言われると悲しくなるね……うん、まあ、水星と金星の話もそう。なんでも信じちゃうエノちゃんだからさー、金星を水星だって教えられたわけ。もう嘘だってわかってるんだけど、最初に水星って教わっちゃったから、もう反射的に水星って思っちゃうんだよね」
「なるほど、ね。そんなエノちゃんのお話、詳しく聞きたいな。水星を金星だって偽るなんて、きっとなにか理由があったのよね?」
アオルタってこれだから怖い。
気づいたら、もう逃げ場ないよね?これって話すしかない感じだよね?
「はぁ〜」
小さく息を吐いて、あたしは口を開いた。
「そんなにおもしろい話じゃないよ?」
▼▼▼
あたしがマリナと出会ったのは、『STEREOLUV(ステレオラブ)』っていうナイトクラブだった。週に2回、おそうじのバイトで通ってたの。
あたしもマリナも金曜日の夕方と土曜日の夕方の開店前の担当。
「はじめまして!あたしエノ。よろしくね」
「私、マリナ。お互い、今日が初日なんだね。どうぞよろしく。」
マリナは色白で、華奢で、黒髪の真面目そうな美人。ナイトクラブのお客さんにはいなそうなタイプに見えた。
大人びて見えたけど、年はあたしより2個だけ上。音楽が大好きなんだけど、年齢的にまだナイトクラブには入れないからって、ここでバイトをしているみたい。
「よーしこの機材もピカピカにしちゃうぞ!」
あたしは気合を入れて機材の拭きそうじを始めた。すると突然大音量で音楽が流れ始める。
「え!?やだ、なんで。どうしよ?ストップボタンこれかな?」
今度はフロアの大型スクリーンに映像が流れ、ミラーボール型のグラムボールが高速でぐるんぐるん回り始める。
「おい、バイト!勝手に何やってるんだ!?」
事務所にいたはずのナイトクラブのスタッフさんが大音量に気づいてフロアに顔を出した。
ああ〜やばい。この高そうな機材、もしかして壊しちゃった? 初日にして、クビかも!?
あわあわするあたしの横でマリナが機材をいじり始めると、大音量がすーっと下がった。
「すいませーん!ちょっと、間違えてスイッチに触ってしまったみたいで。それにしてもここのグラムボールも設備も、最高ですね!ちょっとだけ音楽かけてちゃダメですか?」
マリナが可愛らしく上目遣いでスタッフさんにお願いしている。
「えーキミ、グラムボールの使い方わかるの?」
「はい!わかります!」
「じゃあ、まあ、変なことはしちゃだめだよ。あとあんまり大音量もね。」
そう言って、スタッフさんは事務所に戻っていった。
「はい!ありがとうございますっ!」
こんな美人に上目遣いでお願いされたらスタッフさんも断れないよね。
「はー助かった!ありがとおぉ!初日でクビになるかと思っちゃった!」
「ううん、私もここの機材使えるようになって、ラッキーっていうか。まあでもエノさんはもう機材には触らないほうがいいかもね(苦笑)」
「うん、うん、もう近づかないっ!あ、エノって呼び捨てでいいよ。私もマリナって呼んでいい?」
「うん、エノ、あらためてよろしくね!」
マリナは音響設備に詳しくて、あたしがおかしくしちゃった機材をあっという間に直してくれた。
もちろん音楽にも詳しくて、音楽以外のこともたくさん知ってて、話をするほど、マリナはものすごく頭の良い子なんだと思った。
「ここの音響、ほんっと最高!この音に包まれていられるなんて、幸せ!」
「よかったね、マリナ。音楽がほんとに好きなんだね。確かにここのスピーカー、すごい身体に響くね!」
「うん、音楽に包まれると、一瞬で何もかも忘れられる。寂しいときも、しんどいときも、、いつも音楽に支えてもらった気がしてて。、音楽は私にとって、家族みたいなもの」
マリナがそうじの手をとめて、流れる音楽に少しだけ身体を揺らしながらそう言った。
かっこいいなぁー。
あたしは、ただそう思って、マリナを見つめてしまった。
あたしの視線に気づいたマリナが慌てて、モップそうじを再開する。
「なーんて、変な話しちゃったね。明日はもっとそうじのテンションが上がるような曲選んでくるよ!」
「お、いいね!踊りながらそうじしちゃおう!なんなら、モップをマイクにして歌っちゃう?」
「いいじゃん、そうしよう!」
こうして、あたしとマリナは音楽を流して、おそうじするのが定番になった。
セットリストはいつもマリナが用意してきてくれて。DJマリナなんて茶化しながら。
マリナのセレクトする音楽はもちろんいつも最高にかっこよくて、あたしは正直、誰の曲なのかとか誰が歌ってるのかとかさっぱり知らなかったけど。
「この曲、好きだな!DJマリナの選曲はマジ神……思わず口ずさんじゃうね♪」
「私、エノの歌声好きだな。即興の歌詞も……趣深いね」
「そんなこと言われたら……気合入れて歌っちゃうよ!」
マリナの手にかかると、このフロアは自在自在。音楽に合わせて照明やミラーボールも動き出す。
あたしとマリナ以外、誰もいないSTEREOLUVのフロアで、派手な照明とミラーボールに照らされながら、まるで二人だけのステージみたいに、いつもふたりで踊りながら、歌いながらそうじをしていた。その時間は完全に、ふたりだけのナイトクラブだった。
心地よい音楽と、マリナとのおしゃべりと、週に2日のこの時間は私にとって、最高に楽しいお仕事だった。
▼▼▼
バイトが始まって6ヶ月くらいしたころのことだった。
STEREOLUVに向かうと、事務所から人声が聞こえた。
『今の……あの子……引き込んで……ほうが……』
『……口出し……ないで、……私が……するから』
会話の内容はよくわからないけど、この声はマリナ?
と思ったら事務所のドアが開いてマリナが出てきた。
「わ!マリナ、どうしたの?」
「あ、エノ、うん、ちょっと事務所に用事あったの。それより…聞いて聞いて!」
マリナに押されるようにロッカールームに向かう。
「守護星占い?なんか最近流行ってるっていう?そんなに当たるんだ」
「うん! 私の守護星は冥王星なんだけど、今年は金運がツイてるらしくって、最近、別バイトでの臨時収入がかなり……!」
「えー!ほんとに!?」
「エノの誕生日っていつ?」
「2月24日!」
「2月24日は…水星!『好奇心旺盛で、いろいろなことに興味を持つ分トラブルに巻き込まれがちだど、悪いこともプラスに変えていけるパワーの持ち主』だって〜!」
「水星かぁ。プラスに変えていけるパワーっていいね!運勢は?」
「えーと、水星の今日の運勢は…あ、最下位だ!あはは!誘惑に逆らえず思わぬ出費をしてしまいそう、だって!!」
「えぇ……今月きびしいのにぃぃ……」
「ねえねえ、エノ、今日このすぐ近くのディセンバーストリートでナイトマーケットやってるんだって。仕事終わったあとちょっと見ていかない?」
「ナイトマーケット?楽しそう!行きたい!」
おそうじを終えて、ディセンバーストリートに向かうと通りはライトアップされていて、屋台がたくさん。
人もたくさん溢れていた。
「わぁ!お祭りみたいだね!」
「エノ、ナイトマーケットに来たのは初めて?」
「うん、実は初めてなんだよね。来てみたかったんだ!」
「じゃあ、見て回ろう!」
マリナはあたしの手を取ると、人混みの中に飛び込んでいった。
人混みをうまくよけながら、ナイトマーケットを進んでいく。
「あ、このお店かわいい!」
「どれどれ……」
マリナが足を止めたのは、ハンドメイドの雑貨を売っている屋台だった。
「このキーホルダー、かわいくない?」
マリナが手に取ったのはミラーボールの形をしたキーホルダーだった。
「うんうん、かわいい!ちっちゃいのによく出来てる。」
「それ、オルゴールなんですよ。後ろのつまみを巻いてみてください」
屋台のお姉さんがすかさず声をかけてくる。
「へーこんなに小さいのに、すごいね。どれどれ……あっ、この曲、エノが気に入ってた歌だよ!」
「あーほんとだ!これ、ほしいっ!」
「ねえ、エノ。これおそろいで買おう!ロッカーの鍵につけようよ。エノはこのエメラルドグリーンが似合いそう。」
「じゃあマリナには……そうだな……うーん、このクールなブラックのミラーボールかな!」
「「これ、ください!」」
守護星占いは当たった!(涙)
「エノ、おなかすかない?」
「あー、さっきお買い物しちゃったから、ちょっとお財布が……」
「お金に困ってるの?」
「んー、まぁ、ちょっとね……でも、給料日まで節約したらなんとか大丈夫!」
マリナが心配そうに訪ねてきたので、あたしは少し強がった。
「……あのさ、エノ……」
マリナがなにか言いづらそうにしている。
「ん?どうしたの?」
「……ううん。なんでもない」
なんだろう。何か言いたげだったけど。
「――エノはそのままでいてね」
「え?どうしたの急に??」
「ううん、なんでもない。……あ、別の仕事の呼び出しが来たみたい。ごめん、エノ!私、行かなくちゃ……」
「あ、うん!またバイトでね!」
マリナはにこやかに手を振りながら人混みに消えていった。
▼▼▼
それから数日後。
その日もいつも通りおそうじを終えて、マリナと一緒にSTEREOLUVをあとにした。
冬が近づいて、外に出るとすっかり日も暮れていた。
「わー寒いっ!」
マリナが肩をすくめる。
「もうすっかり暗いね……あ、見てマリナ。星が見える!」
「ほんとだね。空気が澄んでるから、きれいに見える」
「あたし、星座とかぜんぜんわかんないけど、星空けっこう好きなんだよね。そういえば、あたしの守護星ってどこにあるのかな?」
「水星は……」
「ねぇねぇ、今度一緒にマリナと水星見てみたいな! STEREOLUVの屋上から星を見るってどう? 夜でも、屋上には上がらせてもらえそうじゃない?」
「エノ、水星はあれだよ。いつも一緒に見てる、あの星。あの一番星が水星だよ!」
「え!そうだったの!?あれが水星だったのか!」
「そうだよ。だからわざわざ屋上に行かなくても、いつも見えるよ」
「なーんだ!あたし、ほんとそういうこと知らなくってさ。気づかなかったよ」
「灯台下暗しってやつね。じゃあ、また来週ね、エノ!」
「うん、じゃあね、マリナ!」
いつもと変わらず、あたしは手を振ってマリナと別れた。
STEREOLUVのバイトの前日の木曜日は、スポーツクラブのおそうじ担当の日。
プールを磨き上げて達成感を感じながら、外に出ると今日もすでに日が暮れていた。
そして、空にはこの前マリナに教えてもらった一番星、水星が輝いていた。
「おお!今日も水星が輝いている!あたしの星っ!」
明るく輝いてきれいな星、なんて思っていたら、近くにいたバイト仲間たちに笑われる。
「エノちゃん、何言ってるの、あれは金星だよ」
「そうそう、一番星と言えば、金星!」
あたしは心の底からびっくりした。
「えええ〜!?あれは水星でしょお?」
「いやいやいや、勉強あんまりしてない俺でも知ってるくらい有名な話、あれはき・ん・せ・い!」
「うそだぁ〜!じゃあ水星はどこですか?」
「水星はわからんなぁ、見たこと無いなぁ」
「えええええ〜」
「金星知らない子なんて初めて見たわ、俺。しかも水星って、誰にそんな嘘吹き込まれちゃったの?」
嘘?……間違いではなく、嘘だったのかな?
たしかに、あの賢い子がそんなことを間違って覚えてるなんて、ないよね。
どういうこと?
マリナの嘘の理由がわからず、あたしは悶々と考えながら家路についた。
考えたところで、思い当たるフシもないし、おなかがすいた……。
「あーカップ麺も、もうないや……」
この家には食べるものがない。とほほ。
もういいや、今日は寝ちゃおう。
あたしはそのままもそもそとベッドに潜り込んた。
▼▼▼
そして木曜日。
ぐうぐう鳴るおなかをなだめながらSTEREOLUVに向かった。
ロッカールームのドアを開けると、マリナがもう仕事支度を整えたところだった。
「あ、マリナ、今日は早いね。ねぇ、マリナとこの前一緒に見た星、あれ金星だって言われちゃったよー。水星じゃなかったみたいだよ。なんでかねー?」
マリナがふぅっとため息をついたのが聞こえた。
「……それは私がエノに嘘を教えたから」
「えっと、なんで嘘を…?」
「知らないままのほうがいいこともあるよ」
マリナはそう言うと、あたしの横をすり抜けてフロアに行ってしまった。
あたしも急いで着替えフロアに向かう。
「ねえ、なんで嘘なんて?」
そうじの手は止めずにマリナに問いかける。
マリナはDJブースを丁寧に拭いていた手を止めて、唇に人差し指を当てた。
(黙って……)
今日もSTEREOLUVのフロアにマリナの音楽が流れる。
何事もなかったようにマリナはそうじをして、音楽に身を揺らしている。
マリナのポケットからあのキーホルダーがのぞいている。
黒い小さなミラーボールは光を反射して星のようにキラキラと光を放っている。
あたしは問いかけたいのをこらえて、そんなマリナを見ている。
「エノ、明日、おそうじが終わったら、水星を見に行こう」
「うん、……うん!」
明日になれば、きっとマリナは理由を話してくれるんだと思った。
あたしの好きな曲が流れ始める。
あたしも踊り始める、歌い出す。
ジーンズのポケットからのぞく、あたしのミラーボールもキラキラと揺れている。
「じゃあ、また明日!一緒に水星、見に行くんだからね」
念を押すようにあたしは繰り返す。
「うん、エノ。またね」
また明日会うのだから、という気軽さで、マリナは手を振って帰っていった。
そしてその夜事件は起こった。
あたしがそれを知ったのは翌日のことだ。
ナイトクラブに向かうと、警察に封鎖されていたのだ。
「ここでバイトしてた者です、何があったんですか?!」
ナイトクラブの前にいた警察に聞いてみたけど、何も教えてもらえなかった。
マリナも事件のことを知らずに、バイトに来るはずと、ナイトクラブの近くでしばらく待ってみたけど、結局現れなかった。
『エノ、明日、おそうじが終わったら、水星を見に行こう』
約束、したのにな。
その後、おそうじバイトの派遣元から連絡がきた。
ナイトクラブの仕事はなくなった、と。
連絡をくれた派遣元のおばちゃんに事件のことを聞くと色々教えてくれた。
なんでもナイトクラブでかなり大掛かりなドラッグの密売がされていたのだそうだ。
でも結局、警察につかまったのはドラッグを買った客数名とナイトクラブのオーナーだけ。
警察は明け方に取引があるというガセ情報を掴まされていたらしいとおばちゃんは鼻息荒く説明してくれた。
あたしはどこか遠い世界の話のように聞いていたけれど、おばちゃんの次の言葉で一気に現実に引き戻された。
「それがね、売人たちを集めてドラッグを売りさばいていた黒幕が、エノちゃんと一緒におそうじしてたアルバイトの子じゃないかって警察が疑ってるみたいなの。」
「ええ!?まさか……」
そう言いながら、あたしはマリナの、年齢以上に大人びた雰囲気、頭の良さ、そしてどことなく漂っていた別世界の匂いを思い出していた。
しばらくの間、この件は「未成年者が首謀者のドラッグ事件」として世間を賑わせたけれど、警察の捜査は早々に行き詰まったらしく、事件もすぐ世間から忘れられていった。
それくらい、マリナはきれいに跡形もなく、消えてしまっていたらしい。
あたしはようやく、マリナにはもう会えないんだ、と気づいた。
マリナがなんであんな嘘をついたのか、結局わからないまま。
そして水星の思い出は、解けない謎が小さなトゲとなってあたしの胸にチクリとひっかかっている。
▼▼▼
「いやーまさか、一緒にバイトしてた仲間が、ドラッグの売人の黒幕かもなんてね……」
「そうね、水星の話からこんな話を聞くことになるなんて思わなかったわ」
「あたし、マリナのこと大好きだったな。賢くて、きれいで、大人びてて、音楽のセンスもめっちゃかっこよかった。……でも、やっぱりなんで嘘ついたのか、謎なんだよね……」
「ねぇエノ、水星っていつ見えるか知ってる?」
「ううん、結局知らない」
「あのナイトクラブの事件は私も記憶にあるわ。あれは冬の始まりだったから、あの時期の水星は明け方、太陽の近くに見えるはずよ……こう考えることはできないかしら? マリナはあなたを事件に巻き込みたくなかったから、わざと嘘をついた。エノが水星を見に明け方にナイトクラブに来ようと言ったりしないように」
あたしは目も口もぱっくりあけて、アオルタを見つめた。
「!!!」
アオルタもなんでも知ってて、賢くて、すごい人。
「まあ、エノに都合が良すぎる推理かもしれないけれど……」
「都合良すぎるけど、でもきっと、そうだよ!アオルタ、ありがとう!」
「お礼を言われるのも変な感じだけど、どういたしまして」
「……今までずっと、なんでマリナが嘘ついたのかわからなくて、別にそれが悲しいとかそういうんじゃないんだけど、心にひっかかって、トゲみたいだったの。それが今日、トゲがとれたよ!」
「そう……話してみてよかったでしょ?」
アオルタがいたずらっぽく微笑んだ。
「うん、そうだね!」
あたしは、空を仰ぐ。
すっかり日は沈み、一番星だけでなく空にはいくつもの星がキラキラと瞬いていた。
「マリナ、どこかで元気にしてるといいな」
「私たちが、MINERALSが歌っていれば、どこかで聞いてるかもしれないわね」
「そうだね。どこかで聞いててくれたらいいな」
END
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